筋核数は我々のトレーニングに対する応答性を決めている?

論文レビュー

筋核数は我々のトレーニングに対する応答性を決めている?

今回は我々の筋肉を形作っている骨格筋細胞、その中でも細胞の「核」にターゲットを当てて新しいエビデンスを紹介したいと思います。この記事を読んでいただいているトレーニーの皆さんは日夜、筋肉を大きく、そして強くするためハードワークに励まれていることと思います。筋肉が大きくなるということは即ち骨格筋細胞が大きくなるということです。

筋肉は長さが最長で数十センチにもなる糸のような線維上の細胞が集合することで構成されています。この辺は改めて記事をまとめたいと思いますが、この骨格筋細胞の特徴としてあげられることはズバリ、長い、そして非常に沢山の細胞核をもっているということです。

一般的な細胞は一つの細胞に一つの核を持っていますが、骨格筋細胞は一つの細胞の中に1mmの長さあたりに100個ほどの核を持っています。さらに面白いことに古く骨格筋細胞は核数が大きいほど大きな筋線維サイズであるということが観察されてきました。そうすると「細胞核の数が骨格筋細胞の大きさを決める要因なのかな?(因果関係)」ということになるわけですが、これについては長らく謎に包まれてきました。今回紹介する「」というNature commに掲載された論文は細胞核の数が骨格筋細胞の大きさを決めることを初めて示した論文です。この研究では子供のマウスに筋核が増えないような遺伝子の改変を行いました。通常子供のマウスの筋肉は成長に伴って筋肉が大きくなるとそれに伴い筋核数も増えていきます。しかし筋核が増えないよう遺伝子の改変をされたマウスでは成長に伴う筋肉の増大が見られなかったのです。このことから筋核数が筋細胞のサイズの制限因子である可能性を初めて因果関係のレベルで示しました。

 今回の研究は「成長期」を実験のモデルにすることで細胞核の数が骨格筋細胞のサイズの制限因子である可能性を示していますが、成長期でない大人でも筋肉が大きくなる際に筋核が増えることがヒトでもわかっています(ref)。さらに興味深いことに筋肉が肥大しやすい人は核も増えやすいということがこれまでにも多く観察されています。今後骨格筋の細胞に無数にある核がどのように細胞のサイズ調節に関わっているかわかってくることで、より効率的に筋肉を大きく成長させるストラテジー、あるいは刺激の仕方などが見つかってくるかもしれません。

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